トンガ派遣隊員報告

シニア海外ボランティアとして2016年1月からトンガ水産局で活動してきましたが、早いもので任期も残すところ1ヶ月余となりました。今回で3回目の報告となり、これまで2年間の活動で見たこと、聞いたこと、感じたことをあらためて振り返ってみました。

トンガでの養殖に関するボランティア活動を進める上でフィッシュ・マーケットは大変役立つ情報源なので週一回は顔を出し店先の魚介類などの写真を撮ってきました。統計資料を見ると移動回遊する魚類を除き地先の定着資源として水揚げ量が一番多いのは意外なことにアカガイでした(写真1。水産局としてもアカガイの資源動向に関心が高く増養殖対象種となることを見越して先ず種苗生産に取り組んでみました。12月から産卵誘発し始めましたが40℃の加温海水にも反応せず2月にようやく産卵したので何とか種苗生産し、それらの幼生や稚仔は将来の天然採苗にも役立つようサンプル保存しました(写真2。同じような観点からその後もアサリ、サザエ、ウニなど次々と幼生飼育し、それぞれ餌料培養の効果を実証するとともに今後に向け生産時の写真記録など残していきました。

ある日、オーストラリアの同僚ボランティアから真珠の種苗生産をしてみないかとの話がありました。真珠はオーストラリア側のプロジェクトなので遠慮していたのですが、日本式と比較する良い機会なので早速取り組んでみました。彼我の違いはいろいろあり、浮遊幼生の管理や付着時にネットを用いて生残りを高めることなど従来の方法と比べ効率的な点は積極的に取り入れ今季に生かすこととなりました(写真3

日本でも収穫の秋に農林水産物の展示会などありますが、トンガでは国王主催のロイヤル・ショウとして7月に華々しく開かれます(写真4。その時期が来ると水産局など関係部局は業務内容の展示コーナーなど作成するわけですが、絶好のPR機会として準備に夢中となり前夜はほぼ徹夜で作業します。今年はボランティア活動の紹介としてナマコ、ウニ、サザエの赤ちゃんを展示しようという話が持ち上がり、夜明け前皆と一緒に水産局の水槽から運び込みました。おかげで国王、皇太子に足を止めていただき種苗生産の説明時には励ましの握手までいただきました。これらの小さな生物がトンガの豊かな海を支える第一歩となるようJICAのボランティア活動が国王の印象に残ってくれれば幸いです。

ひょんなことから7月以降はモズクに取り組む羽目となりました。ワカメ・コンブは多少分かりますが、モズクは全く見たこともなく当初はオゴノリをモズクと間違えて写真を撮っていました。母藻探しに各地の海底を見て回りましたが松島湾に匹敵するような広い湾入域でモズクがアマモ帯の中に密生しており予想以上に豊富な現存量が確認されました。モズクの語源は「藻付く」とか、丁度海底のシャコガイに付いていましたが(写真5、ほとんどのモズクは本来アマモの枯葉や海底の基質に着生していました。もちろん人工採苗して養殖試験を行いましたが、あれほどの広大な天然群落を目にすると養殖が必要か首をひねるところです。いずれにしてもモズクなど海藻類は肥満防止の健康食品として極めて有望なのでトンガの大切な海の財産には変わりありません。

ところで、これまではトンガ本島で活動していましたがシーズンオフの9月に離島を訪れました。飛行機で行けば1時間で着く距離ですが、海に働く者としてはやはりフェリーで行き、外洋の風波やクジラの様子などを見ることにしました。深夜出港し翌朝に寄港したハフェーバのリーフ内では早くもクジラの親子が見られ、さらにハアパイ、ババウまで洋上を見渡しているとあちこちで潮吹きが視認され、成程トンガのホエールウォッチングが有名なことに得心しました。ハアパイ諸島ではビーチ・コーミングのほか真珠養殖の調査などで海底観察する機会があり、自然の豊かさを実感しました(写真6。ババウから1日がかりでトンガ本島に戻りましたが、夜明け前に周辺諸島が見えてくると昔日の面影というか広大なポリネシアの海に君臨したであろうかってのトンガ帝国海軍の姿が想い起こされ、なぜかこの国に愛着を覚えた次第です。

さて、活動1年目にあれ程苦しめられたウニですが今年の種苗生産では餌料藻類や水質管理を改善して何とか着底に成功し、ロイヤル・ショウでも盛んにトゲを動かし愛きょうをふりまいてくれました。そのウニは生後半年大きさ4cmと立派に成長しましたが(写真7)、ナマコの種苗生産時期を迎えまた活躍してくれています。10月に採集した親ナマコは12月の産卵開始まで十分に栄養をつけさせる必要がありますが、そのエサにリーフ内に生えている海藻類が使えないかと思い、試しにウニに与えたところ程良い大きさにかみ砕いてくれるのでそれら粒状物を水槽底面に散布し摂取されるよう工夫しています。そして、今からいよいよボランティア活動の仕上げとしてナマコ種苗生産に入るわけですが、果たしてウニの愛情がナマコに伝わるかどうか帰国後に報告できれば幸いです。

最後にひとこと、トンガ海溝を控えたこの国には数千年前の大津波で打ち上げられたという津波岩があります(写真8。先の東日本大震災の大津波で大きな漁船が三陸の街中へ打ち上げられましたが元々浮いている船と海底の岩では動かす力はケタ違いかと思われ、まさに想像を絶するような大津波の威力の見本です。そして先月、関係省庁の声がけで本島全土で津波避難訓練が予定されましたが、当日朝に延期されることが伝わってきました。我々JICAボランティアで大切なのが安全対策ですので「訓練なくして本番なし」と構えたりするのですが、この国では同僚の様子からみてどうも中止延期など日常茶飯と大らかなものです。一方、今回ニュージーランドのラグビー国際大会ではトンガ・チームが大活躍し国王自ら応援に乗り込み準優勝の栄冠を手にしたわけですが、選手が凱旋帰国した翌日を急きょPublic holidayとするニュースが流れ当日は華々しい街頭パレードが繰り広げられました。さすがに今回は津波訓練時のような当日朝の連絡ではなく前日のニュースとして周知されましたが・・・。もちろん街頭パレードを早速見に行きましたが、これ程多くの人々が集まってきたのかと驚くと同時に延々と続く赤いユニフォーム姿の熱狂的な若者を見ながらまさに大衆的な盛り上がりに国威発揚の場としてPublic holidayが用意されたものと納得しました。そして、ハワイ~ニュージーランド~イースター島にまたがるポリネシアの海を支配してきた父祖の血を受け継ぐトンガ大衆の潜在的エネルギーに対しJICAシニア海外ボランティアとして何が出来たのかあらためて自問した次第です。

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写真1 魚市場水揚げ№1のアカガイ

 

 

 

 

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写真2 アカガイの赤ちゃん(1~2mm)

 

 

 

 

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写真3 付着した真珠貝の赤ちゃん

 

 

 

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写真4 ロイヤル・ショーの王女ら一行

 

 

 

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写真5 シャコガイに着生したモズク

 

 

 

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写真6 オーストラリア同僚と真珠調査

 

 

 

 

 

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写真7 生後半年、育ちざかりのウニ

 

 

 

 

 

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写真8 大自然の驚異、津波岩の全貌

 

 

 

27-3次隊 トンガ派遣 水産養殖  R.S.

以上

 

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