活動報告【2017年3次隊 エクアドル(防災・災害対策)】

活動報告
2017年3次隊 エクアドル(防災・災害対策)木﨑恵理子

宮城県青年海外協力隊を支援する会の皆様、大変ご無沙汰しております。
私は、2018年1月よりエクアドル共和国サリーナス市役所危機管理部にて防災・災害対策の活動をしている木﨑恵理子です。

日本を出発してから早一年半が過ぎ、残すところ私の任期もあと5か月余りとなりました。
前回報告時の去年3月は赴任して間もなく、スペイン語も生活も慣れない環境でしたが、現在は海岸部(コスタ)での生活や食事にはすっかり慣れ、美味しい魚介類やバナナを使った現地料理を堪能しています。
漁師町に暮らす彼らの話すスペイン語の早さにはまだ慣れていませんが、陽気なコスタの人々との生活をとても満喫しています。

活動を行うサリーナス市では、JICA技術協力「地震と津波に強い街づくりプロジェクト」が2017年7月より2021年3月まで入っており、3か月に一度の割合で地震・津波の専門家が日本から来てくださり、津波浸水地図や避難計画策定、市の防災計画アジェンダや耐震建築制度遵守にかかる政令策定補助など、技術的支援を継続してくださっているため、ボランティアとしてはソフト面での支援、つまり防災教育活動を中心にこれまで活動を行ってきました。

サリーナス市はエクアドル最西端に位置し、両側を海に囲まれた半島のようになっており、海抜10メートル以下の市街地が大半を占め、大雨・洪水・高潮・地震・津波といった災害にとても脆弱な地域であると言えます。
最西端にあるチョコラテーラと呼ばれる岬から60㎞の場所に海溝プレートが走っており、専門家によると大地震が発生した場合は最短16分あまりで市内に津波が到達し、8割ほど浸水すると予測されています。

2014年に市役所危機管理課(現在の危機管理部)が創設され、市内でイベント開催時の危機管理計画等、様々な場面での危機対策管理と報告を日常の業務としており、同僚たちは点検のため現場へ出ていることが多いです。
防災教育に関しては、JICAプロジェクトでの活動を通し教育省との連携が始まり、JICAボランティアとして私が赴任した2018年3月頃からは、教育省と連携して管理職や教員向け研修会を実施し、全48校の研修に同僚と入っていくこととなりました。

子ども、保護者、教員、そして地域コミュニティや公的・民間機関等への研修を同僚と断続的に続けたところ、2019年7月現在で人口9万人のうち2万人ほどに研修を行ってきました。
私の赴任前に参加者が数千人しかいなかった避難訓練にも、研修に行った教育機関を中心に1万人以上が参加し、ソフト面での防災啓発活動が少しずつ実を結んでいることが何よりも嬉しく、曜日や時間関係なく一生懸命働く同僚たちにとっても防災に携わる意識や動機付けの向上に繋がっていると実感しています。

ボランティア独自の防災教育活動としては、日本で開発された防災教育教材「ぼうさいダック」のスペイン語版「パトぼうさい」を使った3歳から10歳ごろの子どもを対象とした防災研修をこれまで重点的に行ってきました。
初めてぼうさいダックスペイン語版を開発された元エルサルバドル防災・災害対策隊員の先輩方に多大なご協力をいただき、任地サリーナスでも2018年4月に地域管轄教育委員会へ紹介し、興味を持っていただいたので同年5月に市内教職員対象に研修、同年7月末から市内5校の子どもたちへの研修をとおし、市役所広報課や他同僚の多大な協力を得て、2018年11月にサリーナス版ぼうさいダックを作成・印刷しました。

サリーナス版「パトぼうさい」では暴風雨、洪水、土砂崩れ、火事、地震、津波の6災害について、カード表面に災害のイメージ画像、裏面には発災時に取るべき初期動作をを動物で表現し、言葉の発達段階にある子どもたちにもジェスチャーと簡単な動物の名前で憶えてもらい、非常時の自助の力を育むことを目的としています。
(例:地震の際はアヒルになって頭を守ろう、津波の際はチーターになって安全な高台へ逃げようなど)カードで学んだことをさらに体で習得するため、日本で作成された「ぼうさいのうた」スペイン語版を同僚と編曲・作成し、市内5校の子どもたちや同僚の協力も得て、子どもたちが演奏・合唱・振付をするプロモーションビデオを作成することができました。
Youtube【PATO BOSAI OFICIAL ECUADOR GAD SALINAS PROV STA ELENA】 →こちらのリンクから作成したビデオを見ていただけます)
2018年7月から市内の学校で始めた子ども向けパトぼうさいの研修は、2019年7月現在で市内25校、約4.200名以上の子どもたちに行っております。
(同様の研修をエクアドル国内9か所の隊員任地の学校などで計1,000名以上に研修を行いました)研修時には各学校に本教材を1セットずつ配布し、子どもたちには大変好評を得ております。

エクアドルでの活動においては市役所や関係機関との人間関係、調整しても時間通り、予定通りに物事が進まない難しさや、公務員の安定雇用が確保されていないため、職員の度重なる解雇・異動など予想できない出来事の連続でした。
統一地方選挙の期間中の2019年2月から3月にかけては選挙活動による通常業務がほぼ行えない状況となり、防災研修がほぼ行えず、心身ともに辛い時期が続きました。
その間、他隊員の任地見学や他防災隊員とのコラボ活動などを通して少し視点を変えて自身の活動を見直すことができ、今日までなんとか一年半活動を続けてくることができました。

残り5か月あまりで出来る活動として、2019年7月末からは教員向けのパトぼうさい研修と津波避難ルートための災害時図上訓練(DIG)といった研修も開始し、私の任期満了後も継続した教育活動が続いてくれることを切に願っております。

■写真1活動報告 2017年3次隊エクアドル_1
サリーナス市内の展望台から見た市内(両側が海に囲まれた半島部が市街地です)(2019年6月)

■写真2
活動報告 2017年3次隊エクアドル_2
津波避難訓練時の様子(2018年10月)

■写真3
活動報告 2017年3次隊エクアドル_3
サリーナス市で行った日本文化紹介イベントでの隊員仲間との音楽演奏(2018年7月)

■写真4
活動報告 2017年3次隊エクアドル_4
防災研修を行っている様子(3歳から10歳の子ども向け)(2019年7月)

■写真5
活動報告 2017年3次隊エクアドル_5
防災研修を行っている様子(高学年以降)(2019年7月)

■写真6
活動報告 2017年3次隊エクアドル_6
市役所の同僚たちと(2019年2月)

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